2次関数第 7 回

2次関数の決定

はじめに

今までは主に,与えられた2次関数について考えてきました。 今回は,ある条件を満たす2次関数を見つける練習をします。

目次

2次関数の表し方

今回は,条件を満たす2次関数を見つける練習をします。 そのために,まずは2次関数の表し方を確認しておきましょう。 2次関数の表し方には,次の3つがあります。

2次関数の表し方
  1.  一般形
    \(\quad \quad y = ax^2 + bx + c\)
  2.  頂点が\((p, q)\)
    \(\quad \quad y = a(x - p)^2 + q\)
  3.  \(x\)切片の\(x\)座標が\(\alpha, \beta\)
    \(\quad \quad y = a(x - \alpha)(x - \beta)\)

色んな表し方がありますね。 状況に応じて使いやすい形で表せば,計算が楽になります。 次項から詳しく見ていきましょう。

一般形

まずは2次関数の一般的な表し方から確認します。 2次関数は,2次式の関数ですから,以下の形で表せましたね。

\( \begin{align} y = ax^2 + bx + c \end{align} \)

具体的な式を求めるには,\(a, b, c\)3つの未知数を求める必要があります。 関数のグラフが通る点が3つ分かっていれば,方程式が3つ得られ,3つの未知数が分かるようになります。


例えば,「グラフが3点\((0, 3), (1, 6), (2, 11)\)を通る2次関数を求めよ」という問題を考えてみましょう。 ひとまず2次関数を次のように表しておいて,\(a, b, c\)を求めましょう。

\( \begin{align} y = ax^2 + bx + c \end{align} \)

このグラフが上記3点を通るわけですから,\(x, y\)にそれぞれの点の座標を代入した式が成り立ちます。

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 3 &= a \cdot 0^2 + b \cdot 0 + c \\ 6 &= a \cdot 1^2 + b \cdot 1 + c \\ 11 &= a \cdot 2^2 + b \cdot 2 + c \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

式を整理すると,次のようになります。

\( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} c &= 3 \\ a + b + c &= 6 \\ 4a + 2b + c &= 11 \\ \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

この連立方程式を解くと,\((a, b, c) = (1, 2, 3)\)と求められます。 これで,この2次関数が次の式で表されることが分かりました。

\( \begin{align} y = x^2 + 2x + 3 \end{align} \)

このように,2次関数のグラフが通る点が3つ分かっているときは,この表し方が便利です。

頂点が分かる場合

2次関数の式を平方完成すると,頂点の座標が一目で分かるようになりました。 頂点の座標を\((p, q)\)とすると,2次関数は次のように表せます。

\( \begin{align} y = a(x - p)^2 + q \end{align} \)

頂点が分かっているときには,未知数は\(a\)ひとつだけですね。


例えば,「グラフの頂点が\((1, 1)\)であり,点\((2, 5)\)を通る2次関数を求めよ」という問題を考えてみましょう。 グラフの頂点が分かっているので,2次関数の式は次のように表せます。

\( \begin{align} y = a(x - 1)^2 + 1 \end{align} \)

このグラフが点\((2, 5)\)を通るので,その座標を\(x, y\)に代入すれば,\(a\)を求められます。

\( \begin{align} 5 = a (2 - 1)^2 + 1 \end{align} \)

式を整理することで\(a = 4\)と求められ,この2次関数が次の式で表されることが分かりました。

\( \begin{align} y = 4(x - 1)^2 + 1 \end{align} \)

このように,2次関数のグラフの頂点が分かっているときは,この表し方が便利です。

\(x\)切片が分かる場合

最後に\(x\)切片を使った表し方を紹介します。 \(x\)切片は,2次関数のグラフが\(x\)軸とぶつかる点ですね。 詳しくは次回以降で学びますが,\(x\)切片は0~2個あります。

まず\(x\)切片が2つある場合を考え,その\(x\)座標を\(\alpha, \beta\)としましょう。 グラフが次のようになる場合です。

このとき,2次関数の式は次の形で表せます。

\( \begin{align} y = a(x - \alpha)(x - \beta) \end{align} \)
補足 なぜこの形か

2次関数の\(x\)切片が\((\alpha, 0), (\beta, 0)\)であるとき,関数の式が\(y = a(x - \alpha)(x - \beta)\)で表せる理由を考えましょう。 ただし詳細を理解するには,次回以降で学ぶ2次方程式の知識が必要です。 (さらに詳しくは,数学Ⅱで学ぶ因数定理が理解に役立ちます。)

2次関数の式は,一般には\(y = ax^2 + bx + c\)と表せました。 \(x\)切片は,この式で\(y = 0\)となるときの\(x\)の値ですから,次の2次方程式の解です。

\( \begin{align} ax^2 + bx + c = 0 \end{align} \)

\(x\)切片の\(x\)座標が\(\alpha, \beta\)であるということは,この左辺が次の式のように因数分解できるということです。

\( \begin{align} a(x - \alpha)(x - \beta) = 0 \end{align} \)

これで,2次関数の式も次のように因数分解できることが分かります。

\( \begin{align} y &= ax^2 + bx + c \\[5pt] &= a(x - \alpha)(x - \beta) \end{align} \)

次に,\(x\)切片が1つだけの場合も考えましょう。 \(x\)切片の\(x\)座標を\(\alpha\)とします。 グラフが次のようになる場合です。

このとき,2次関数の式は次の形で表せます。 さきほどの式で\(\beta\)\(\alpha\)に変えたのと同じ形ですね。

\( \begin{align} y = a(x - \alpha)^2 \end{align} \)

\(x\)切片が1個でも2個でも,\(x\)切片が分かっているときには,未知数は\(a\)ひとつだけですね。


例えば,「グラフの\(x\)切片が\((-1, 0), (1, 0)\)であり,点\((2, 3)\)を通る2次関数を求めよ」という問題を考えてみましょう。 \(x\)切片が分かっているので,2次関数の式は次のように表せます。

\( \begin{align} y = a(x - 1)(x + 1) \end{align} \)

このグラフが点\((2, 3)\)を通るので,その座標を\(x, y\)に代入すれば,\(a\)を求められます。

\( \begin{align} 3 = a(2 - 1)(2 + 1) \end{align} \)

式を整理することで\(a = 1\)と求められ,この2次関数が次の式で表されることが分かりました。

\( \begin{align} y = (x - 1)(x + 1) \end{align} \)

このように,\(x\)切片が分かっているときには,この表し方が便利です。

確認問題

グラフが次の条件を満たす2次関数をそれぞれ求めてください。

  1. 3点\((1, 2), (2, 1), (3, -2)\)を通る

  2. \((2, -3)\)を頂点とし,点\((4, 5)\)を通る

  3. \(x\)切片を\((-1, 0), (-3, 0)\)とし,点\((-4, -6)\)を通る

答え

与えられた条件に応じて,計算が楽になるように2次関数の表し方を考えましょう。

  1. 3点を通ることだけが分かっていて,頂点や切片は分かりません。 この場合は,2次関数を次のように一般形で表すことにしましょう。

    \( \begin{align} y = ax^2 + bx + c \end{align} \)

    このグラフが3点\((1, 2), (2, 1), (3, -2)\)を通ることから,次の連立方程式が得られます。

    \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} 2 = a \cdot 1^2 + b \cdot 1 + c\\ 1 = a \cdot 2^2 + b \cdot 2 + c\\ -2 = a \cdot 3^2 + b \cdot 3 + c \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

    整理すると,次のようになります。

    \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} a + b + c &= 2 \\ 4a + 2b + c &= 1 \\ 9a + 3b + c &= -2 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

    これを解くと,\((a, b, c) = (-1, 2, 1)\)です。 したがって,題意の2次関数は\(y = -x^2 + 2x + 1\)です。

  2. 頂点が\((2, -3)\)だと分かっているので,題意の2次関数は次のように表せます。

    \( \begin{align} y = a(x - 2)^2 - 3 \end{align} \)

    このグラフが点\((4, 5)\)を通ることから,次の方程式が得られます。

    \( \begin{align} 5 = a(4 - 2)^2 - 3 \end{align} \)

    これを整理して解くと,\(a = 2\)です。 したがって,題意の2次関数は\(y = 2(x - 2)^2 - 3\)です。

  3. \(x\)切片が\((-1, 0), (-3, 0)\)だと分かっているので,題意の2次関数は次のように表せます。

    \( \begin{align} y = a(x + 1)(x + 3) \end{align} \)

    このグラフが点\((-4, -6)\)を通ることから,次の方程式が得られます。

    \( \begin{align} -6 = a(-4 + 1)(-4 + 3) \end{align} \)

    これを整理して解くと,\(a = -2\)です。 したがって,題意の2次関数は\(y = -2(x + 1)(x + 3)\)です。

グラフが次の条件を満たす2次関数をそれぞれ求めてください。

  1. \(y = 2x^2\)のグラフを平行移動したもので,2点\((-1, -6), (2, 9)\)を通る

  2. \(y = -3x^2 + 4x + 2\)のグラフを平行移動したもので,2点\((-2, 0), (5, 0)\)を通る

答え

2次関数のグラフの形は,\(x^2\)の係数によって決まります。 グラフを平行移動しても,グラフの位置が変わるだけで,形は変わらないことに注意すると,平行移動しても\(x^2\)の係数は変わらないことが分かります。 このことを利用すると,計算が簡単に行えます。

  1. 頂点や切片の情報が与えられていないので,関数の式は一般形で表すことにしましょう。 ただし,グラフの形は平行移動前と変わらないので,\(x^2\)の係数は引き継ぎます。 このことを踏まえると,関数は次のように表せます。

    \( \begin{align} y = 2x^2 + bx + c \end{align} \)

    このグラフが2点\((-1, -6), (2, 9)\)を通ることから,次の連立方程式が得られます。

    \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} -6 &= 2 \cdot (-1)^2 + b \cdot (-1) + c \\ 9 &= 2 \cdot 2^2 + b \cdot 2 + c \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

    整理すると,次のようになります。

    \( \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} -b + c &= -8 \\ 2b + c &= 1 \end{array} \right. \end{eqnarray} \)

    これを解くと,\((b, c) = (3, -5)\)です。 したがって,題意の2次関数は\(y = 2x^2 + 3x - 5\)です。

  2. 平行移動前のグラフの方程式が分かっているので,\(x^2\)の係数は\(-3\)です。 また,\(x\)切片が\((-2, 0), (5, 0)\)ですから,題意の2次関数は次のように表せます。

    \( \begin{align} y = -3(x + 2)(x - 5) \end{align} \)