中学校で習った平方根について改めて学習します。 平方根は無理数の例としても既に出てきましたね。
目次
平方根
2乗すると\(a\)になる数を\(a\)の平方根といいます。 例えば\(4\)の平方根は\(2, \ -2\)の2つです。 このように\(a > 0\)のとき\(a\)の平方根は正負2つあり, それぞれ\(\sqrt{a}\),\(-\sqrt{a}\)と表します。 \(\sqrt{4} = 2\)というわけですね。
この記号\(\sqrt{\ \ \ \ }\)には根号という名前がついています。
\(a = 0\)のとき\(a\)の平方根は\(0\)の1つだけです。 \(a \lt 0\)のとき\(a\)の平方根は(実数の範囲には)ありません。 どんな実数も2乗すると\(0\)以上になるので2乗して負になる実数はないわけです。
次に平方根の性質を確認しておきましょう。
- \(a \geqq 0\)のとき\((\sqrt{a})^2 = a, \ \ \ (-\sqrt{a})^2 = a\)
- \(a \geqq 0\)のとき\(\sqrt{a} \geqq 0\)
- \(\sqrt{a^2} = \vert a \vert\)
1つ目は平方根の定義ですね。
2つ目は\(\sqrt{a}\)は正の平方根を表しているという説明です。 負の平方根は\(-\sqrt{a}\)というように負の符号をつけて表します。
\(a = 0\)の場合\(\sqrt{a} = 0\)なのでこれを「正の」平方根というのは正確には違いますが,便宜上このような表現をしています。
3つ目について\(\sqrt{a^2}\)は\(a^2\)の正の平方根を表します。 2乗して\(a^2\)になる数は\(a\)と\(-a\)の2つあります。 このうち正の数は\(a > 0\)なら\(a\)の方,\(a < 0\)なら\(-a\)の方になります。 つまり\(a^2\)の正の平方根は\(\vert a \vert\)になるので\(\sqrt{a^2} = \vert a \vert\)となるわけです。
実数\(a\)の絶対値は次の性質を持ちます。
\(a \geqq 0\)のとき\(\vert a \vert = a\)
\(a <0\)のとき\(\vert a \vert = -a\)
次に平方根の公式を確認しておきましょう。
- \(\sqrt{a}\sqrt{b} = \sqrt{ab}\)
- \(\displaystyle\frac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} = \sqrt{\displaystyle\frac{a}{b}}\)
- \(\sqrt{k^2a} = k\sqrt{a}\)
\(a > 0, b > 0, k > 0\)とします。
1つ目は\((\sqrt{a}\sqrt{b})^2 = (\sqrt{a})^2(\sqrt{b})^2 = ab\)であり, \(\sqrt{a}\sqrt{b} > 0\)なので\(\sqrt{a}\sqrt{b}\)は\(ab\)の正の平方根になっているということです。
2つ目は左辺,3つ目は右辺の2乗を計算してみればすぐに確かめられます。
この公式が根号の計算の基本になります。 根号をまとめたり,根号中の平方因数を根号外に出したりできます。 平方因数とは素因数分解したときに平方(2乗)の形にできる因数のことです。
下の計算例のように根号の中には平方因数を残さないようにします。
2重根号
根号の中に根号がある\(\sqrt{7 + 2\sqrt{10}}\)のような2重根号を扱うことがあります。 2重根号はもっと簡単な式にできる場合があり,実は\(\sqrt{7 + 2\sqrt{10}} = \sqrt{5} + \sqrt{2}\)です。
2重根号の外し方を説明します。 上の例で見たように2重根号は\(\sqrt{a} \pm \sqrt{b}\)という形にできることがあります。 このように変形できると仮定してから実際に\(a\)と\(b\)を求めると良いです。
計算例を見ましょう。上の\(\sqrt{7 + 2\sqrt{10}}\)を簡単にしてみます。
まず\(\sqrt{7 + 2\sqrt{10}} = \sqrt{a} + \sqrt{b}\)と変形できたらいいなーと願いを込めます。 \(a, b\)は根号の中身なのでともに\(0\)以上でなければならないことに注意しましょう。
このとき\(7 + 2\sqrt{10} = (\sqrt{a} + \sqrt{b})^2\)ですね。 右辺を展開すると\((a + b) + 2\sqrt{ab}\)となるので, 両辺を見比べると\(a + b = 7, \ ab = 10\)となるような\(a, b\)を見つければ良さそうです。
足して\(7\),掛けて\(10\)なので\(a = 5, b = 2\)です。 \(a, b\)を入れ替えても同じことですね。 これで\(\sqrt{7 + 2\sqrt{10}} = \sqrt{5} + \sqrt{2}\)と変形できることが分かりました。
もし\(\sqrt{7 - 2\sqrt{10}}\)のように根号の中にマイナスがあるときは \(\sqrt{7 - 2\sqrt{10}} = \sqrt{a} - \sqrt{b}\)として\(a, b\)を求めましょう。 これが負の値になってはいけないので\(a > b\)でなければならないことに注意です。
確認問題
次の計算をしてください。
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\(\sqrt{2} \cdot \sqrt{3}\)
-
\(\sqrt{3} \cdot \sqrt{6}\)
-
\(\displaystyle\frac{6}{\sqrt{3}} \cdot \displaystyle\frac{3}{\sqrt{27}}\)
-
\(\sqrt{6} \cdot \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{\sqrt{3}}\)
答え
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\(\sqrt{2} \cdot \sqrt{3} = \textcolor{red}{\sqrt{6}}\)
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\(\sqrt{3} \cdot \sqrt{6} = \sqrt{3^2 \cdot 2} = \textcolor{red}{3\sqrt{2}}\)
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\(\displaystyle\frac{6}{\sqrt{3}} \cdot \displaystyle\frac{3}{\sqrt{27}} = \displaystyle\frac{18}{\sqrt{9^2}} = \displaystyle\frac{18}{9} = \textcolor{red}{2}\)
-
\(\sqrt{6} \cdot \displaystyle\frac{\sqrt{5}}{\sqrt{3}} = \sqrt{\displaystyle\frac{6 \cdot 5}{3}} = \textcolor{red}{\sqrt{10}}\)
次の式の2重根号を外してください。
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\(\sqrt{11 + 2\sqrt{30}}\)
-
\(\sqrt{11 - 4\sqrt{7}}\)
答え
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\(\sqrt{11 + 2\sqrt{30}} = \sqrt{a} + \sqrt{b}\)とおきます。 このとき\(11 + 2\sqrt{30} = (\sqrt{a} + \sqrt{b})^2\)なので\(11 + 2\sqrt{30} = (a + b) + 2\sqrt{ab}\)です。
両辺を見比べると\(a + b = 11, \ ab = 30\)なので\(a = 5, \ b = 6\)です。 以上より\(\sqrt{11 + 2\sqrt{30}} = \textcolor{red}{\sqrt{5} + \sqrt{6}}\)です。
-
\(\sqrt{11 - 4\sqrt{7}} = \sqrt{a} - \sqrt{b}\)とおきます。\(a > b\)でなければならないことに注意です。
このとき\(11 - 4\sqrt{7} = (\sqrt{a} - \sqrt{b})^2\)なので\(11 - 4\sqrt{7} = (a + b) - 2\sqrt{ab}\)です。 \(4\sqrt{7} = 2 \cdot 2\sqrt{7} = 2\sqrt{2^2 \cdot 7} = 2\sqrt{28}\)なので,上式は\(11 - 2\sqrt{28} = (a + b) - 2\sqrt{ab}\)です。
両辺を見比べると\(a + b = 11, \ ab = 28\)なので\(a = 7, b = 4\)です。 以上より\(\sqrt{11 - 4\sqrt{7}} = \sqrt{7} - \sqrt{4} = \textcolor{red}{\sqrt{7} - 2}\)です。
次の数の整数部分・小数部分を答えてください。
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\(\sqrt{66}\)
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\(2\sqrt{10}\)
答え
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\(\sqrt{2} = 1.41 \cdots\)など有名な平方根の値は知っていると思いますが\(\sqrt{66}\)の値なんて知りませんよね。 どうやって整数部分・小数部分を求めたらよいでしょうか。
例えば\(2 = \sqrt{2^2} = \sqrt{4}\),\(7 = \sqrt{7^2} = \sqrt{49}\)ですよね。 このように整数を平方根で表すと根号の中身は平方数になります。 この値を使えばあらゆる平方根の大きさを知ることができます。
問題の\(\sqrt{66}\)でいえば\(\sqrt{64} < \sqrt{66} < \sqrt{81}\)なので\(8 < \sqrt{66} < 9\)です。 これで\(\sqrt{66}\)の整数部分は\(8\),小数部分は\(\sqrt{66} - 8\)であることが分かります。 このように平方数の比較を行うことで,平方根の大きさも分かるわけです。
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(1)と同様に考えると\(\sqrt{9} < \sqrt{10} < \sqrt{16}\)なので\(3 < \sqrt{10} < 4\)です。 したがって\(6 < 2\sqrt{10} < 8\)です。 しかしこれでは\(2\sqrt{10}\)の整数部分が\(6\)なのか\(7\)なのか分かりませんね。
こういうときは\(2\sqrt{10} = \sqrt{2^2 \cdot 10} = \sqrt{40}\)と変形しましょう。 こうすれば\(\sqrt{36} < \sqrt{40} < \sqrt{49}\)なので\(6 < \sqrt{40} < 7\)と分かります。 したがって\(2\sqrt{10}\)の整数部分は\(6\),小数部分は\(2\sqrt{10} - 6\)です。